GALLERY KOGURE
金澤水銀窟では大森記詩(おおもり・きし/1990~)の個展を開催いたします。
「OVERHEAD YARD」
大森は、金属鋼材(鋼板を板や棒などに加工した素材)を用いたUnscaled(アンスケールド)なオブジェクトの制作を通して、自身や世界を取り巻くスケール感そのものを実体化させるというテーマに取り組んでいます。今回の個展では、これに加えて、俯瞰(OVERHEAD)をキーワードとしながら、”風景”や”光景”といった新たな視点を取り入れた新作を中心に展開します。
大森は、特に金属鋼材が有する断片性(鋼材という、工業用材料へと加工された状況)へと強く着目しており、これは自身が幼少期より傾倒してきたプラスチックモデル(プラモデル)の”架空の断片性”がルーツのひとつにあると考えてきました。プラスチックモデルは、戦後の極東日本で独自の展開を続けてきたプロダクトです。近年は、そのパーツそのものを彫刻素材としてアッサンブラージュする《Training Day》の制作も行っていますが、これと並行して金属鋼材による作品制作ではプラモデルに同梱されている”デカール(プラモデルのモチーフである戦闘機や戦車、レーシングカー等に施されている、ロゴやマーキングを想定された縮尺に縮小して再現した転写式シール)”を用いた作品も発表。デカールをオブジェクトの表徴へと様々にコラージュすることで、彫刻の物質的なサイズだけではない縮尺を併存させ、鑑賞者と空間に存在する既存のスケール感を変性させるというアプローチも行なっています。
本展に合わせて制作された新作では、大森が日々アトリエへと向かう際に利用する国道6号線での光景をモチーフにした《Route 6》や、パースペクティブと塗装を組み合わせた《Arc Light》、H形鋼を用いて風景彫刻の要素を取り入れた《Beam scape》、住居や倉庫をディフォルメした《House》、《Warehouse》といった試みが発表されます。本展では、一連の新作と2019年に制作された断片的な形態にフォーカスした作品群とを併せて展示することで、大森が日常的に観察しているオブジェクトと風景へのフォーカスのパン/アウトを擬似的に再現し、我々のもつ”スケール”と、その”リアリティ”のルーツや有様についてを俯瞰し、再考する場・空間を作り出します。その不思議なスケール感もさることながら、独自の色彩、デザイン、そして巧に金属を操る大森が生み出す作品の心地よい姿・形に魅了されることでしょう。是非ご覧ください。Artist Official Page大森記詩 / Kishi OMORI